「江戸歴史探訪-その九」を行いました

日時:2023 年 10 月 7 日(土)10:30~15:00
 当企画も振り返れば 9 回目になりました。ひょんなことから始まった江戸街歩き。8 回経過したところでコロナが。昨年(2022 年)コロナ明けの復活を企図したものの雨で無念の中止。というわけで 2019年 10 月谷中七福神巡り以来 4 年ぶりの江戸街歩きになりました。今回は向島。この向島という地名ですが、当代随一の大都会であった浅草から隅田川をはさんで向こう側に見える島、これがつまり向島なんですね。ずっと昔は田畑が広がる農村地帯だったそうで、浅草の人からは、川向うと田舎扱いされていたそうです。実際、向島は「寺島ナス」の産地だったとの説明板が白髭神社にあります。関東大震災後、向島の開発が進み、今のような町が出来てきたそうです。江戸時代とはいささか異なりますが、まあ、往年の風情を感じることができるなら、それはそれでいいか、ということで向島をそぞろ歩きです。

 出発は東向島駅。なんとも趣のない駅名。私が 30 代の頃九州で勤めていた会社の本部がここいらへんにありまして、むかーし一度来たことがあるんですが、その頃は「玉ノ井」駅という名前だったんですよ。これ遊郭の名前です。先ほどの関東震災後に、私娼街ができたんだそうです。ちなみに吉原は公娼街。で、今から 30 年ほど前に、遊郭の名前が駅名では世間体が悪いとでも思われたか、今の駅名に変更されたとか。なんとも無粋な話ではあります。「玉ノ井」なんていい響きだと思うんですけどねえ。

 それにしてもここらへん界隈、散歩するにはいいところですよ。耳に馴染みの人物名があちこちに出てきますもん。幸田露伴、榎本武揚、正岡子規、野口雨情、王貞治などなど。明治の文豪って名前は知ってるけどその作品に接したことはありませんですねえ。でもこれだけ名前が出てくると興味はわきます。それに吉備団子屋さんあり草餅屋さんありです、情趣をそそりますよね。この吉備団子、なかなか美味しかったけどもうちょっと大きいといいなあ。また、名にし負う向島芸者さんたちの見番所(芸者さんの取次なんかを行うところだそうです)なんかもあります。今でも向島には料亭がいくつもあって、たくさんの芸者さんがいるんですって。料亭も芸者さんもとんと縁のない田舎者としては、ただふーんと頷くだけですけど。川沿いに有名な言問い団子屋さんがあって興味をそそられるんですが、この団子、まあ値の張ること。なんかもう観光地値段というか、この値ではちょっと手が出ないなあ。墨田川べりの人道橋、桜橋のたもとで昼食。人道橋越しに眺める対岸の浅草の遠景もなかなかいいですよ。昼食後、三囲(みめぐり)神社、牛嶋神社、隅田公園を巡り、隅田川沿いの明治天皇玉座(ここからレガッタをご覧になったとこ)碑、半藤一利さんの書いた隅田川レガッタの記念碑を見て、最後に墨田区役所脇の勝海舟銅像前で集合写真の撮影。その後、新しくできた隅田川リバーウオーク(人道橋)を渡って対岸の浅草に渡りました。頭のすぐ上を東武電車が通るのがなかなかの迫力。浅草は向島とは打って変わってすごい人並。インバウンドが戻ってきております。和服の女性がちらほら見受けられますが、たいていは日本人じゃないんだそうですね。

 それにしても浅草はちょっと混み過ぎ。浅草特有の情緒というか風情というか、そういった雰囲気を味わうのはちょっと無理。それにしても、ほんとにいい天気に恵まれました。関東地方では久しぶりの好天だったそうで、天は我々を見捨てなかったなあと嬉しさひとしおでした。いたるところで青空を背景にしたスカイツリーを眺めるのもなかなかよかったですねえ。皆さんに楽しい一日を過ごしてもらえたのではないかと自画自賛。また新たな江戸の散策ルートを探す意欲が湧いてきました。


(2023/10 前田康行 記)